沖縄戦検定にかかわる訂正申請提出にあたっての声明
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1.私たちは、社会科教科書執筆者として、沖縄戦に関する今回の不法な検定によって歪められた教科書記述を回復する方法について模索してきた。そのなかで去る9月25日に歴史学・歴史教育関係者17人の呼びかけによって開かれた社会科教科書執筆者懇談会において、一つの方法として、困難ではあるが訂正申請を提出する方向で各社それぞれに努力することを申し合わせた。その結果、今回の検定意見の対象になったすべての教科書で訂正申請にむけての準備が進むことになった。 2.今回の検定意見が担当の教科書調査官によって執筆者と教科書会社に口頭で説明されたとき、林博史氏の著書『沖縄戦と民衆』の記述が根拠にあげられた。たしかに林氏の著書には、慶良間諸島の事例について、軍からの明示の自決命令はなかったと書いた箇所がある。しかし林氏の著書全体の趣旨は、さまざまな形での軍からの強制がなければ「集団自決」は起こりえなかったと、「自決」が起こらなかった地域との対比のなかで結論づけている。教科書調査官は初歩的かつ明白な誤読をしており、検定審議会委員もそれを追認した。このような初歩的な誤読にもとづく検定意見が、文科省のいうように、学問的立場から公正に審議した結論だなどとはいえない。 3.訂正申請にもとづく記述の回復・訂正も、本来検定意見撤回という前提のもとに行われるべきものである。検定意見が撤回されないもとで、訂正申請に対して何を基準にその内容を審査するのかを、文科省はまったく明らかにしていない。このような不明朗な審査を行うべきではない。その意味で、訂正申請のみによって問題が正しく解決されるとは到底考えられない。よって私たちは、問題の根本的解決のために検定意見の撤回をあくまでも求める立場に変わりはない。 4.けれども一方で、来年4月に高校生に教科書が手渡される前になんとしても記述の回復・改善を実現したいという思いを私たちは強く持っている。いまだ検定意見が撤回されないため、記述の回復・改善のための条件が十分に整っているとはいえないが、今後の検定意見撤回に向けた動きのなかで、文字通りの記述の回復・改善の実現をさらに追求していくことを前提にしつつ、来年4月の教科書の供給に間に合わせることを考え、記述の回復・改善のための一つの方法として、この時点での訂正申請の提出に踏み切った。 5.3でも述べたように、検定意見が撤回されないもとでは、今後、訂正申請に対しても恣意的な修正要求が文科省・検定審議会から出される可能性がある。ここでも文科省・検定審議会が沖縄県民や各研究者などから示された具体的歴史事実、とくに最近続々とあらわれている新しい証言などにどれだけ真摯に対応するのかが問われることになる。 6.さらに、今回の検定問題を通じて明らかになった、次のような検定制度の改善すべき点についても検討し取り組んでいく所存である。 1)教科書調査官、検定審議会委員の人選を透明化、公正化すること。 2)検定審議会の審議を公開すること。 3)検定意見に対する不服申し立てについては、実際に機能する制度にすること。 4)検定基準に沖縄条項を設け、それに対応して検定審議会委員に沖縄近現代史の専門家を任命すること。 5)教科書調査官制度について、その権限の縮小ないしは廃止を検討すること。 6)検定審議会を文科省から独立した機関とするよう検討すること。 |
2007年11月7日 社会科教科書執筆者懇談会 呼びかけ人 荒井信一 石山久男 宇佐美ミサ子 大日方純夫 木畑洋一 木村茂光 高嶋伸欣 田港朝昭 中野 聡 西川正雄 浜林正夫 広川禎秀 服藤早苗 峰岸純夫 宮地正人 山口剛史 米田佐代子 連絡責任者 石山久男 170-0005 豊島区南大塚2-13-8 歴史教育者協議会内 TEL 080-3023-6880 03-3947-5701 |