文部科学省 御中

                            2007年12月13日

 

                      沖縄平和ネットワーク

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訂正申請に対する「指針」への抗議声明

 

 貴省が,高校歴史教科書の検定において,沖縄戦「集団自決」への日本軍の強制を削除した件に関して,教科書会社に伝達した訂正申請書き直しの「指針」の全容が本年12月9日の新聞報道で明らかになった。

 「指針」は,「『集団自決』は太平洋戦争末期の沖縄で,住民が巻き込まれるという異常な状況下で起こったものであり,その背景には当時の『教育訓練』や『感情の植え付け』など複雑なものがある」と指摘している。その「複雑な状況」とは,日本軍が主体となって官(行政)を取り込んだ「軍官民一体となった戦時体制=軍官民共生共死の一体化」という軍事政策のもと,住民に対し「県民悉く武装」「特攻精神の権化たらん」「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓等を「教育訓練」し,日本軍に従う素地となる「感情」の「植え付け」を徹底した結果,戦闘の邪魔になる住民に対し,地上戦の中でガマ追い出し・食料強奪・住民虐殺等の日本軍の命令によって「複雑な状況」がつくされ,多大な被害が生じたものである。従って,主語である日本軍を削除することによって,日本軍の責任を不問にする見解であるといわざるをえない。

 「指針」は,「直接的な軍命に基づいて行われたということは,現時点では確認できていない」としているが,戦争体験者の「日本兵から直接手榴弾が手渡された」「敵につかまりそうになったら舌をかみ切って死になさいと日本兵にいわれた」等、『沖縄県史』や県内各市町村史の戦時編記録、沖縄戦研究者による記録・検証された多くの証言によって,すでに明らかにされており,貴省のその認識は全く根拠がないものといわざるをえない。

「指針」は,「住民側から見れば,当時のさまざまな背景や要因によって,『集団自決』せざるを得ない状況に追い込まれた」「複合的な背景,要因によって住民が『集団自決』に追い込まれていったととらえる視点に基づく教科書記述が望ましいと考える」となっているが,上記のしたように日本軍による軍政の中で軍事が優先される「さまざまな背景」がつくられ,日本軍からの命令(軍命)が「手榴弾を渡す」「舌をかみ切って死ぬ」等と具体的に住民に対して行使されていったのであり,貴省の指摘は,軍命以外にもさまざまな要因や背景があるかのような誤解をあたえると同時に日本軍の強制性を薄める恐れがあり看過できない。

 今回の訂正申請は,教科書会社や教科書執筆者が9.29県民大会の決議に基づく県民の要請に応えて,修正意見が付される前よりも更に沖縄戦の実相を深める内容で申請したことがマスコミ報道によって明らかになっている。従って,貴省がこの訂正申請を無条件に受け入れないということは,9.29県民大会決議を受け入れないという意思表示をしたものであり,断じて許すことはできない。

  貴省が,教科書会社に訂正申請を促したのは,9.29県民大会の決議で「教科書に沖縄戦の実相を正しく記述する」ことを求めた県民の声に応える目的でなされたものと理解していたが,「指針」はその要請に全く応えるものではなく,むしろ県民の声を無視し,沖縄戦の実相を否定するものといわざるをえない。

よって当会は,貴省が9.29県民大会の決議に基づき教科書検定が公正・透明な手続によってなされることを求める県民の声に全く応えていないことに対し,厳重に抗議し,教科書検定意見の撤回と今回の教科書会社の訂正申請を無条件に受け入れることを強く求めるものである。

以 上 

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