教科書検定に関する意見書

 我が県は、先の大戦においてわが国唯一の地上戦の戦場となり、県民12万、日本軍人を含め20万余の尊い命が失われました。
 本市も沖縄戦にのける激しい地上戦で多くの住民が犠牲になりました。直接の戦闘による犠牲とは別に、日本軍による「避難場所からの追い出し」や「米軍への投降の阻止」などでも多数の住民がしに追い込まれました。現在アブチラガマ等に多くの修学旅行生も訪れ、平和学習の場となっており、戦争の真実と平和の尊さを伝える役割を担っています。だからこそ、歴史の真実を伝えることは、重要であると考えるものであります。
 しかるに、2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになりました。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人等が起こした裁判などをあげています。
 しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を一方的に否定しようとするものです。
 沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による命令・強制・誘導等なしに、起こりえなかったことは紛れもない事実であり、そのことがゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、多くの犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではありません。
 よって本市議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにするためにも、今回の検定意見が速やかに撤回されよう強く要請します。

以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出します。

 平成1964

沖縄県南城市議会 

 あて先  衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣

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