教科書検定に関する意見書

 沖縄県は、日本においては唯一地上戦が展開され多くの住民が犠牲になっている。特に北谷町は、米軍の上陸地点となり、統計表では北谷住民の7人に1人が戦争犠牲者となった。本町発刊「北谷の戦時体験記録」によると、戦争犠牲者の中には、直接米軍の砲爆撃等による被爆死だけではなく、日本軍に「食料強奪」「壕追い出し」「非国民・スパイ視容疑」などで死に追い込まれた沖縄県民が多数いたことは、その聞き取り調査による戦時体験証言から考えても歴史的事実である。
 2008年度から使用される高校教科書の検定結果の公表で、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本軍による強制又は命令は断定できない」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや自決を命じたとされる元軍人らが起こした裁判などを挙げている。
 しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、数多くの戦時体験証言や歴史的事実を否定するものである。
 本町は、平和の礎や北谷町非核宜言、北谷町民平和の日制定など「命どぅ宝」の考えの下に平和な社会の建設に努め、アジアや世界に向けて平和を希求する心を発信しつづけてきた。
 戦後は世代交代があいまって、戦争を知らない世代が増え、歴史的教訓である戦争体験を風化させず、後生に正しく語り継がなければならない。
 よって、本町議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにするためにも、今回の検定意見が速やかに撤回されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成19年5月17目

                           沖縄県中頭郡北谷町議会

あて先
 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 文部科学大臣
 内開府特命担当大臣(沖縄担当) 沖縄県知事

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