教科書検定に関する意見書

 今から62年前の1945年、この沖縄の地で住民を巻き込んだ国内唯一の地上戦が行われ、県民の4人に1人が犠牲となった。手湯の暴風といわれる凄まじい砲爆撃が県土を焦土と化した。中でも本町は、住民の実に47%にあたる5,100人余の尊い命が奪われた沖縄戦最大の激戦地である。いまだに未収骨や不発弾が発見されるなど、戦争は終わっていない。戦後62年、沖縄戦の真実を伝えることは重要である。
 そのような中、2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見により、日本軍の命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかとなった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出ていることや、自決を命じたとされる元軍人が起こした裁判などを挙げている。
 しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするものである。
 沖縄戦の記述をめぐっては、1982年、文部省(当時)の検定により、日本軍による「住民虐殺」の記述削除が明らかになった際、「県民殺害は否定することできない厳然たる事実である」ことを臨時県議会(同年94日)において、「全会一致」で意見書を採択し、記述復活をさせた経緯がある。
 沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による命令・強制・誘導などなしに起こりえなかったことは紛れもない事実であり、それが歪められることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではない。
 よって本町議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることのないようにするためにも、今回の検定意見が速やかに撤回されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

 平成19614

                              沖縄県西原町議会

あて先
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
文部科学大臣 伊吹文明 殿

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