教科書検定に関する意見書

2007年3月30日に公表された高等学校歴史教科書の検定結果によれば、文部科学省は、沖縄戦における「集団自決」について「日本軍による自決命令や強要があった」とする5社、7冊に対し、「沖縄戦の実態について誤解の恐れのある表現」として修正を指示し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除、修正させたことが明らかになった。
 同省は、検定姿勢変更の理由として、(I)当時の指揮官の「自決命令はない」との訴訟提起(2)軍の命令の有無より、自決に至った精神状態を論じる学説の台頭などを挙げている。しかしこれは、沖縄戦体験者による数多くの証言による沖縄戦研究の蓄積・歴史的事実を否定しようとするものである。それに沖縄戦における「集団自決」は、教科書検定が争われた過去の訴訟でも、日本軍による「自決」強要が次のように認定されている。「沖縄戦における日本軍による住民の犠牲者の中には、日本軍によって直接殺害された者のほか、日本軍によって自決を強要された者、日本軍によって壕を追い出され、あるいは食糧を強奪されたため死亡するに至った者があるとするのが、概ね学会における一般的理解であるということができる」(1989年10月3日、東京地裁判決)これに二審の東京高裁判決(1993年10月20日)でも認定され、軍による強制は明確になっている。
 この教科書検定結果は沖縄戦の実相を歪めるものであり、戦争の本質を覆い隠すもので、沖縄の未来を担う子どもはおろか、日本全国の子どもたちにこのような教科書がわたることは到底容認できるものではない。
 よって当町議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こされることがないようにするためにも今回の検定意見が速やかに撤回され、記述の復活が速やかに実現されるよう強く要請する。

以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

 平成19年5月24日

                                                沖縄県与那原町議会
あて先 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、文部科学大臣、
沖縄担当大臣、沖縄県知事

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