教科書検定に関する意見書

62年前の沖縄戦では、当時の県民の4分の1が犠牲となり、県土は焦土と化した。また、戦後も今日に至るまで未収骨問題や不発弾撤去など、沖縄戦は決して過去のものではなく、今も県民の記憶から消し去ることはできない。
 二度と再びこのような戦争を繰り返さないためにも、歴史の真実を伝えることは、重要であると考える。
 このような中、2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人らが起こした裁判などを挙げている。
 しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするものである。
 沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による命令・強制・誘導等なしに、起こりえなかったことは紛れもない事実であり、そのことがゆがめられることは悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではない。
 よって、本町議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにするためにも、今回の検定意見が速やかに撤回されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成19年6月12日

                             沖縄県金武町議会

あて先:内閣総理大臣
     文部科学大臣

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