教科書検定に関する意見書

 2008年度から使用される高校教科書検定の結果が公表されました。そして、沖縄戦における「集団自決」の記述については、「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見によって、日本軍による命令・強制・誘導等の表現が削除・修正されていたことが明らかになりました。
 沖縄戦の記述をめぐっては、1982年、当時の文部省の検定により日本軍による「住民虐殺」の記述削除が明らかになった際、「県民殺害は、否定することのできない厳然たる事実である」ことを、1982年9月4日の臨時県議会において全会一致で意見書を採択し、記述復活をさせた経緯があります。その際、文部省は、沖縄戦の住民犠牲を記述する場合は、「犠牲的精神の発露として住民自ら命を絶った集団自決」を記述するよう求めたのです。その後、痛苦な体験を語る人々や沖縄戦研究等の結果により、「集団自決」の背景に軍の関与が明らかになり、現在の記述になった経緯があります。これは、第3次家永教科書裁判における最高裁判決で「集団自決」の原因については、日本軍の存在とその誘導かつ一律に集団自決と表現したり美化したりすることは適切でないという指摘が認定され、これまで教科書記述としても定着してきました。
 今回、文部科学省は「集団自決」の記述修正・削除の主な理由として、大阪での「集団自決」訴訟を挙げています。しかし、現在係争中である裁判を理由にし、かつ、元隊長である原告の主張のみを一方的に取り上げることは、文部科学省自ら課している検定基準「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」を逸脱しているばかりか、これまでの体験者による証言や「県史」を再び否定しようとするものです。
 沖縄戦における「集団自決」が、「軍による強制・強要・命令・誘導等」なしには、起こりえなかったことは、否定することのできない事実であり、その事実がゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられできた沖縄県民にとって、到底容認できるものではありません。
 二度と悲惨な戦争を起こさないために、子どもたちにこの歴史の真実を正しく伝えることは、わたしたち大人の最も重要な責任ではありませんか。
 よって、本議会は今回の検定意見を速やかに撤回し記述を復活させるよう強く要請いたします。

以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

平成19年5月25

沖縄県恩納村議会  

 〈あて先〉
  衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 文部科学大臣 沖縄担当大臣
  沖縄県知事

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