教科書検定に関する意見書

 本村は、悲惨を極めた沖縄戦の縮図に例えられるほどの激戦地で、軍民合わせ約3,500もの尊い命が犠牲になっている。また、直接の戦闘による犠牲とは別に、日本車による「避難所からの追い出し」ばかりか、アハシャガマ、サンダタ壕では日本兵による命令・誘導等により筆舌しがたいほど悲惨な「集団自決」などで多数の住民が死に追い込まれ、更には、米軍の占領下では強制疎開で約2年もの間、帰島が許されなかった。
 本村では組織的戦闘が終結した4月21日に、戦争で犠牲となった多くの住民や兵隊の御霊を慰さめると共に、世界の恒久平和を願い、多くの遺族や関係者らが参列し毎年平和祈願祭を開催している。また、県内外から数多くの修学旅行生が来島し、ガマ・公益質屋をはじめとする数多くの戦跡や戦争体験者の証言から平和の尊さを学び、終戦から60余年が経過し風化しつつある戦争の悲惨さを学び二度と過ちを繰り返さないよう、平和学習の場・平和発信の地としての重要な役割も担っている。だからこそ、歴史の真実を伝えることは、重要であると考える。
 「教育」とはありのままの真実を「教」え伝え、将来を担う子どもたちの夢や希望を「育」むものだと考える。また、教科書は、教科の主たる教材として重要な役割を果たしており、人間の尊厳、平和、民主主義を基調とする憲法の理念に立つものでなければならない。2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人らがおこした裁判などを挙げている、しかしながら係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的な記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするものである。沖縄戦における「集団自決」が、日本軍に上る命令・強制・誘導等なしに、起こりえなかったことは紛れもない事実であり、そのことがゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、今回の検定結果は、歴史的事実を直視しない押し付けの教科書であると言わざるを得ず、到底容認できるものではない。
 よって伊江村議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こされることがないようにするためにも今回の検定意見書が速やかに撤回されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成19年6月14

沖縄県伊江村議会  

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