教科書検定に関する修正意見撤回を求める意見書

教育とは真実を伝えるものです。また、教科書は、教科の主たる教材として重要な役割をしており、人間の尊厳、平和、民主主義を基調とする憲法の理念に立つものでなければなりません。
 3月30日、2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本車による強制または命令は断定できない」とし、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになりました。
 沖縄戦の記述をめぐっては、1982年、文部省(当時)の検定により、日本軍による「住民虐殺」の記述削除が明らかになった際、「県民殺害は否定することの出来ない厳然たる事実である」ことを臨時県議会(1982年9月4日)において全会一致で意見書を採択し、記述復活をさせた経緯があります。その際、文部省(当時)は、沖縄戦の住民犠牲を記述する場合は「犠牲的精神の発露として住民自ら命を絶った集団自決」を記述するよう求めたのです。
 その後、痛苦の体験を語る人々や沖縄戦研究等の結果により、「集団自決」の背景に「軍の関与」があったことが明らかになり、現在の記述になった経緯があります。これは、第3次家永教科書裁判における最高裁判決(「集団自決の原因については、日本軍の存在とその誘導」かつ「一律に集団自決と表現したり美化したりすることは適切でないという指摘」を認定)でも明確に判示され、教科書記述としても定着化してきました。
 今回文科省は、「集団自決」記述修正・削除の主な理由として、大阪での「集団自決」訴訟を挙げています。しかし、現在係争中である裁判を理由にし、かつ、元隊長である原告の主張のみを一方的に取り上げることは、文科省自ら課している検定基準である「未確定な時事的事象について断定的な記述しているところはないこと」を逸脱しているばかりか、これまでの体験者による証言や「県史」を再び否定しょうとするものです。
 沖縄戦における「集団自決」が、「軍による強制・強要・命令・誘導等」なしには、起こりえなかったことは、不定することの出来ない事実であり、その事実がゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、到底容認できるものではありません。
 悲惨な戦争が再び起こることがないようにするためにも、沖縄戦の歴史を正しく教え伝えることが、我々沖縄県民の責務だと考えます。
 つきましては、沖縄戦の歴史を後世に正しく伝え、悲惨な戦争が再び起きることがないようにするためにも今回の検定意見が速やかに撤回され、記述の復活が実現されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法弟99条の規定により意見書を提出します。

 平成19年6月12日

沖縄県伊平屋村議会  

 内閣総理大臣 殿
 文部科学大臣 殿
 沖縄及び北方対策担当大臣 殿
 衆議院議長  殿
 参議院議長  殿

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