教科書検定に関する意見書

 今から62年前、沖縄では国内唯一の地上戦があり、鉄の暴風が吹き荒れたと言われるほど県土は焦土と化した。この沖縄戦で、当時の県民の4分の1が犠牲となり、いまだ未収骨と不発弾があり、戦後は終わっていない。終戦と同時に本土と分離され、27年間の米軍による異民族支配、その後本土復帰したものの今日でも米軍基地の過重負担と重なり、沖縄戦の悲劇は県民の脳裏から消え去ることはない。
 「教育」とはありのままの真実を「教」え伝え、将来を担う子どもたちの夢や希望を「育」むものだと考える。また、教科書は、教科の主たる教材として重要な役割を果たしており、人間の尊厳、平和、民主主義を基調とする憲法の理念に立つものでなければならない。2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「日本車による強制又は命令は断定できない・実態を誤解する恐れがある」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人らが起こした裁判などを挙げている。
 しかしながら、係争中の裁判を理由にし、かつ一方の当事者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的な記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするものである。
 沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による命令・強制・誘導等なしに起こりえなかった事は紛れもない事実であり、そのことがゆがめられることは、20万人余の尊い人命が奪われるなど悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、今回の検定結果は、歴史的事実を直視しない押しつけの教科書であると言わざるを得ず、到底容認できるものではない。
 よって当村議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こされることがないようにするためにも、今回の検定意見が速やかに撤回され、記述の復活が速やかに実現されるよう強く要請する。

  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  平成19年6月20日

 伊是名村議会  

宛先
内閣総理大臣
衆議院議長
参議院議長
文部科学大臣
沖縄及び北方対策大臣
沖縄県知事

inserted by FC2 system