教科書検定に関する意見書

教育とは真実を教え伝えるものです。また、教科書は、教科の主たる教材として重要な役割を果たしており、人間の尊厳、平和、民主主義を碁調とする憲法の理念に立つものでなければなりません。2008年度から使用される高校教科書検定結果の公表によると、沖縄戦における「集団自決」の記述について「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見により、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させられていたことが明らかになった。
 その根拠として文部科学省は、日本軍による命令を否定する学説が出てきていることや、自決を命じたとされる元軍人らが起こした裁判などを挙げている。しかしながら、係争中の栽判を理由にし、かつ一方の当時者の主張のみを取り上げることは、文部科学省自らが課す検定基準である「未確定な時事的事象について断定的な記述しているところはないこと」を逸脱するばかりか、体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするものである。 沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による命令・強制・誘導等なしに、起こりえなかったことは紛れもない事実であり、そのことがゆがめられることは、悲惨な地上戦を体倹し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって、今回の検定結果は、歴史的事実を直視しない押し付けの教科書であると言わざるを得ず、到底容認できるものではない。
 よって渡嘉敷村議会は、沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こされることがないようにするためにも今回の検定意見書が速やかに撤回され、削除・修正させられていたことの復活が速やかに実現されるよう強く要請する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成19年6月14日

沖縄県渡嘉敷村議会  

あて先:内閣総理大臣 安倍晋三殿 文部科学大臣 伊吹文明殿

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