沖縄戦での日本軍による「集団自決」強制の事実を歪めた高校日本史教科書検定に抗議する

 2007330日に公表された高校日本史の教科書検定で、沖縄戦のいわゆる「集団自決」に当時の日本軍による強制があったとする趣旨の記述に検定意見がつき、修正がおこなわれたことに強い憤りを感じるとともに、そうした恣意的な教科書検定がおこなわれたことに抗議します。

 沖縄戦における「集団自決」が日本軍の強制や誘導のもとでおこっていたことは、多くの証言とこれまでの歴史研究で明らかにされ、これが通説となっていました。そうした研究成果をもとに、従来の教科書では、日本軍による誘導と強制のもとで起こった「集団自決」という記述がなされ、教科書検定でも認めてきていました。しかし、今回の検定において、日本軍による誘導と強制の事実を隠して、あたかも住民が自発的に自決したかのように書き直されたことは、歴史研究を踏みにじるとともに後世に禍根を残すことが明白です。

 このような検定がおこなわれた根拠の重要な一つは、20058月に自決命令を出したとされる元日本軍守備隊長らが、命令をしておらず、名誉を毀損されたという訴訟を起こしたことにあるとされています。その訴訟の単なる一方の側の主張をもとに通説をくつがえす検定をおこなうのは、余りにも恣意的な検定と言わざるを得ません。そもそも、その訴訟自体、あのアジア太平洋戦争を「侵略戦争ではなかった」と主張するする人たちが、沖縄戦の「集団自決」においても「軍命はなかった」として2005年から教科書からの削除を求めてきた運動の一環にすぎません。このような政治的な運動の圧力によって教科書記述が歪められること自体、未来を担う子どもたちに真実を隠す教育をおし進めることにつながります。

 歴史研究の成果と戦争の事実を子どもたちに伝えることが、「再び戦争を起こさない」「平和を愛する日本国民」の願いです。私たちは、その国民の願いを無視し、過去と向き合わない偏狭で姑息な歴史認識に基づく今回の教科書検定に抗議するものです。また、文部科学省による歪んだ教科書検定を改めるとともに、今回の検定意見を撤回することを強く求めます。


2007
412

                     歴史教育者協議会常任委員会




 




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