文部科学省による「沖縄戦の歴史歪曲」を許さない抗議文

3月30日、沖縄戦における「集団自決」に対する日本軍の関与を否定した教科書検定結果が公表された。
 文科省は検定意見の理由として、「岩波『集団自決』訴訟」をあげている。しかし、裁判は現在係争中である。このことがすでに文科省自らが課している検定基準(未確定な時事的事象について断定的な記述しているところはないこと)を逸脱しているといえる。さらに、司法的な判断がまだなされていない状況で、裁判の争点である「日本軍の関与」について削除をもとめることは、裁判自体に大きな影響を与えようとする政治的意図の表れとしか言いようがない。
 1982年、文部省(当時)は、日本軍による「住民虐殺」の記述削除をもくろんだものの沖縄戦の実相を否定するものとして、戦争体験者を含む沖縄全県民の怒りの声を受け、記述復活せざるを得なくなった。その際、「沖縄戦の住民犠牲を記述する場合は、犠牲的精神の発露として住民自ら命を絶った『集団自決』を記述するよう強制した」のである。しかし、その後痛苦な体験を語る人々や沖縄戦研究の結果により、「集団自決」は「悲惨な死」であったことが明らかになったのである。これは、第3次家永教科書裁判における最高裁判決(「集団自決の原因については、日本軍の存在とその誘導」かつ「一律に集団自決と表現したり美化したりすることは適切でないという指摘」を認定)でも明確に示されている。
 このような経過を無視し、現在係争中の裁判を利用することで、日本軍の直接間接的関与を否定し、沖縄戦の悲惨な歴史を美化することが今回の検定意見のねらいなのである。
 私たちは、昨年12月の「教育基本法改悪」に始まり、「教育再生」の名のもとにすすめられている教育改革の動きは、日米再編、国民保護法そして憲法改正の動きなどと連動する「戦争できる国づくり」だと訴えてきた。今回の検定結果はまさに「沖縄戦の歴史を歪曲」することで、「戦争できる国民」を学校からつくり出そうとする動きである。
 私たちは子どもに直接関わるものとして、このような一連の政治的意図ですすめられた今回の歴史歪曲を絶対に許すことはできない。
 私たち教職員組合は、「教え子を再び戦場に送らない」という強い決意のもと、沖縄の実相を通して歴史の真実を伝えることが教師の責務であると確信している。教育が一方的な考えを押し付けることは決してあってはならない。よって文部科学省は、今回の検定意見を直ちに撤回するよう強く要求する。

宛 文部科学大臣
200743

沖縄県教職員組合・沖縄県高等学校障害児学校教職員組合




 




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