教科書検定における沖縄戦の実相を歪曲する修正指示の
撤回を求める声明

2007年3月30日に公表された高等学校歴史教科書の検定結果は、これまで沖縄戦における「集団自決」について「日本軍による自決命令や強要があった」とする5社、7冊に対し、文部科学省は「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」として修正を指示し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させたことが判明しました。
 文部科学省は「岩波『集団自決』訴訟」を修正意見の理由としてあげていますが、裁判は現在係争中であり、しかも原告、当時の守備隊長の主張のみを根拠にしています。このことは「未確定な時事的事象について断定的な記述をしているところがないこと」という自らが課している検定基準をも逸脱しています。
 また第3次家永教科書裁判で「集団自決の原因は、集団的狂気、極端な皇民化教育、日本軍の存在とその誘導、守備隊の隊長命令、鬼畜米英への恐怖心〜」という最高裁判所で確定した判決を文部科学省が否定するものです。
 沖縄戦での「集団自決」に「日本軍の命令・強制・誘導」があった事実は、体験者・現場目撃者の証言、沖縄県下の関係市町村誌に多数収録されています。また日本軍兵士は、慶良間諸島の住民に早くから「玉砕(集団自決)」を繰り返し指示していた事実が1945年の米軍記録として米公文書館に存在することも判明しています。
 自民党の「新憲法草案」には、「自衛軍」の創設が明記されています。安部内閣は、4月13日に「国民投票法案」を衆議院で強行採決しました。去年12月には教育基本法を強引に改悪しました。「憲法改悪」と「愛国心」教育によって「戦争の出来る国づくり・国民づくり」を推し進めています。
 文部科学省による「『集団自決』における軍命令」の削除指示は、「戦争のできる国民」育成のために日本軍の残酷な犯罪を隠蔽・免罪して、日本軍の「軍官民共死共生」の強制と誘導によって起きた肉親同士の殺し合い、「集団自決」を「殉国美談」として歪曲し、「戦争のできる国民づくり」に教育を利用する動きに他なりません。「従軍慰安婦」や「南京虐殺」を教科書から削除させたのと同じ様な政治的意図による歴史の歪曲と軌をーにしています。
 私たち沖縄の退職教職員会は、戦前「皇民化教育」を担わされ、「お国のために喜んで死ぬ」教育をして来た痛苦な体験から「教え子を再び戦場に送らない」を合言葉に教育実践に邁進して来ました。今また教育が為政者の恣意によって危険な方向に向かおうとしています。文部科学省もその流れに棹さしているのを看過することが出来ません。教育は「不当な支配に服する」ことなく真実を教えることです。
 私たち沖縄の退職教職員会は、文部科学省による「沖縄戦の実相を歪曲する修正指示の撤回」を強く求めます。

200759

沖縄県退職教職員会 
沖縄県高等学校障害児学校退職教職員会
中頭退職教職員会




 




inserted by FC2 system