沖縄戦での日本軍による「集団自決」強制の事実を歪めた教科書検定に抗議し、検定意見の撤回を求める決議

 2007330日に公表された高校日本史の教科書検定で、沖縄戦のいわゆる「集団自決」に当時の日本軍による強制があったとする趣旨の記述に検定意見がつき、修正がおこなわれたことに強い憤りを感じるとともに、そうした恣意的な教科書検定がおこなわれたことに抗議します。
 沖縄戦における「集団自決」が日本軍の強制や誘導のもとでおこっていたことは、多くの証言とこれまでの歴史研究で明らかにされ、これが通説となっています。そうした研究成果をもとに、従来の教科書では、日本軍による誘導と強制のもとで起こった「集団自決」という記述がなされ、教科書検定でも認めてきていました。しかし、今回の検定において、日本軍による誘導と強制の事実を隠して、あたかも住民が自発的に自決したかのように書き直されたことは、日本軍の住民への加害を否定しようとすることが明確であり、そのことは、「戦争のできる国」づくりに導いていこうとする意図がみえます。
 このような検定がおこなわれた根拠の重要な一つは、20058月に自決命令を出したとされる元日本軍守備隊長らが、命令をしておらず、名誉を毀損されたという訴訟を起こしたことにあるとされています。その訴訟の単なる一方の側の主張をもとに通説をくつがえす検定をおこなうのは、余りにも恣意的な検定と言わざるを得ません。
 沖縄戦における集団死・「集団自決」が、「軍による強制・強要・命令・誘導等」によって引き起こされたことは、生存者の証言からも否定できない事実なのです。その事実がゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民にとって到底容認できるものではありません。
 県民の90%以上が教科書検定の削除・修正に反対し、沖縄県議会をはじめ、6月末までに沖縄県の41市町村議会で臨時あるいは定例議会で削除・修正反対の意見書採択をおこないました。
 さらに6月9日には、「沖縄戦の歴史歪曲を許さない沖縄県民大会」が多数の県民の参加で行われ、6月15日代表団による文部科学省要請行動が取り組まれ、6月22日には県議会の代表も文科省要請を行いました。
 文部科学省は、これらの沖縄県民の声を真摯に受け止めるべきです。
 教科書は子どもたちに真実を伝える重要な役割を担っています。だからこそ、子どもたちに沖縄戦の実相を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにしなければなりません。私たちは満身の怒りを込めて今回の検定意見に抗議します。

一、沖縄戦の実相を子どもたちに伝えるため、沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定意見をただちに撤回すること。

以上決議します。

2007年6月30日

                               沖縄県教職員組合第43回定期大会




 




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