大阪地方裁判所第9民事部合議2係 御中

「大江・岩波沖縄戦裁判」について

 適正かつ十分な審理と公正な判決を求める要請書

 貴裁判所に係属しております平成17()769号事件について、お願い申し上げます。
 この裁判は、沖縄戦におけるいわゆる「集団自決」について、原告の梅沢裕氏および赤松秀一氏が、現地における日本軍守備隊長による自決命令はなかったと主張するものです。 沖縄戦における「集団自決」の悲劇は、沖縄県民にとって忘れることのできないものであり、そのため、この悲劇がなぜ、どのようにしておこったのかについては、これまで体験者の証言をはじめさまざまな角度からの調査研究が進められてきました。その結果、住民も戦闘にまきこまれるなか、敵の捕虜になることの禁止が徹底され、軍が手榴弾を配付して自決指示を出したなどの事実が明らかになっています。それにより、軍が直接住民にその場で自決命令を発したか否かにかかわりなく、「集団自決」が日本軍による強制・誘導のもとでおこったことが明確になっております。日本軍が存在しなかったところでは「集団自決」がおこっていないこともそのことを証明しており、第三次家永教科書訴訟の最高裁判決(平成9)においても、「集団自決の原因については、集団的狂気、極端な皇民化教育、日本軍の存在とその誘導、守備隊の隊長命令、鬼畜米英への恐怖心、軍の住民に対する防諜対策、沖縄の共同体の在り方など様々な要因が指摘され、戦闘員の煩累を絶つための崇高な犠牲的精神によるものと美化するのは当たらないとするのが一般的であった」との原審の認定を肯定しています。こうして「集団自決」は日本軍の命令・強制・誘導がなければありえなかったとするのが通説となり、従来の多くの教科書もその通説に従って記述し検定にも合格してきたところです。原告の主張はこうした沖縄戦の調査研究の成果を無視した一方的な主張といわざるを得ません。
 貴裁判所が本件訴訟において沖縄出張法廷を開き体験者の証言を聴取することを決定するなど、真実を明らかにするために十分審理をつくそうとしておられる姿勢に敬意を表するものですが、今後においてもひきつづき、これまで積み重ねられてきた沖縄戦研究の成果が生かされる適正かつ十分な審理を行い、上記最高裁判決をふまえた公正な判決を言い渡されるよう要請いたします。

200766

大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会結成総会

 

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