文部科学省による不当な教科書検定を許さない決議

 2007330日に公表された高校歴史教科書の検定結果によると、文部科学省は、沖縄戦における「集団自決」について「日本軍による自決強制や強要があった」とする5社、7冊に対し「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」として修正を指示し、日本軍による強制・誘導等の表現を削除・修正させました。
 この不当な教科書検定に対し、622日には県議会が、そして628日までには全41市町村が意見書を採択するなど、修正撤回を求める怒りの声は県民総意のものとなっています。また、これまで口を閉ざしてきた多くの戦争体験者が今回の「軍命」削除の動きに激しい怒りと危機感から、沖縄戦の実相を語り始めています。このような県民の声を受け、6.9沖縄県民大会実行委員会や県議会、そして県内の行政・議会6団体などが繰り返し文科省へ要請を行っていますが、文部科学省は、「審議会の決定事項」との一点張りで沖縄県民の声に真摯に応えようとしていません。

 しかし、文科省が隠れ蓑としている審議会が、「集団自決」全体について議論していないことや教科書調査官という文科省側の主導で「検定意見」がなされていることが明らかになっています。このように検定制度そのものの不当性が指摘される中、新しい教科書をつくる会は、今回の検定を「『集団自決軍命説』が崩壊した近年の動向を適切に反映した検定」とし、撤回要求に応じないよう総理大臣、文部科学大臣あてに意見書を提出(6/27)するという動きをしています。また、「軍の記述が残っている教科書もあるので、沖縄が選びたい教科書を採用してはどうか」と与党幹部が発言する(6/29新報)など、今回の問題を沖縄だけの問題に矮小化し、切り捨てようとする動きもみられます。このような動きがあるなか、県議会は再度意見書を可決する見通しとなっています。(7/6タイムス)
 私たちはこれまで、教育基本法改悪に始まる政府与党のねらいは「戦争できる国民づくり」だと訴えてきました。その動きは加速し、6月には、子どもたちに「愛国心」を強制し、教職員を縛り上げ、さらには地方における教育まで国が介入できるように教育関連三法が改悪されました。その動きと軌を一にして、今回文科省は、中立・公正を保障すべき検定制度を恣意的に利用し、沖縄戦の実相を教科書から消し去ろうとしているのです。
 私たち教職員の責務は、子どもたちに真実を教え伝えることです。そして沖縄戦における「軍の関与」は、多くの体験者が証言しているように歴史の真実です。いったい審議会はで多くの証言をどう議論したのでしょうか。文科省は審議会を不当に「聖域化」するのではなく、その審議の中身を沖縄県民に明らかにし、今回の検定意見を撤回すべきだと強く訴えます。
 また、教科書は未来を担う子どもたちが使う重要な教材です。そのことを踏まえ、教科書会社・教科書執筆者は、文科省による「歴史歪曲」に応じることなく、歴史の真実を記述するよう求めます。

200776

42回沖縄県高等学校障害児学校教職員組合定期大会

あて先
内閣総理大臣
文部科学大臣
教科書出版社

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